動画像解析で、現在盛んに研究されているテーマの一つは、画像から抽出され た点や線の2次元画像列上の配置から、元の3次元世界の構造や、運動を復元 する問題である。問題の性質から、画像そのものの処理というより、幾何学的 な拘束条件を利用して与えられた方程式を解く数理的な問題に帰着される。こ の種の問題に対し、主に著者のこれまでの研究論文を中心に、射影幾何学、テ ンソル解析の視点から、記述を数学的に一貫させ、教科書的にまとめあげられ たのが本書である。ただし、既存の解説書と異なる著者特有のネーミングも含 まれており、若干の注意を要する。また内容が、3次元剛体運動や物体の3次 元構造の復元とそれらに用いられている数学的概念、諸技術の説明であり、 「画像理解」と称するには、扱っている範囲が狭い。著者もそのことに気づい ており、巻末、「画像理解」についての解説を述べている。これらの解説は、 ある程度コンピュータビジョンの研究に携わってきた者には理解しやすいが (特に、章ごとの既存の論文との対比は有用)、入門者には、必ずしも読みや すいとは、いいがたい(画像理解の解説で、1枚も絵がない)。これらの点を 考慮すれば、数理的手法に関するよくまとめられた教科書である。この意味で は、副題の「3次元認識の数理」ほうが、まだ内容を伝えている。