コンピュータビジョンの研究は,極論すれば,何らかのパラメータを推定する
ことに尽きると思います.従来から,観測データに対して,最小二乗法を適用
することが,当然のこととして行われてきましたが,実は,最小二乗法は最も
精度が悪い方法なのです.
著者らは,画像から得られた誤差を含む観測データに対して,幾何学的な当て
はめを行う統計的に最適な理論を構築し,精度の理論限界を達成する種々の方
法を開発し,コンピュータビジョンに現れる様々なパラメータ推定問題に用い
てきました.
本書は,楕円の当てはめ,基礎行列,射影変換行列の計算,画像からの3次元復
元といった,コンピュータビジョンにおける幾何学的当てはめ問題に対する最
新の理論をまとめたものです.ジオメトリは難しい,理解できない,研究を行
うにも敷居が高そうだ,と思うかもしれませんが,本書は,最初に計算手順が
示されており,その手順に従って,計算を行うことは容易だと思います.理論
的な内容は,計算手順の後に,解説がなされ,式の導出は詳細な解答として,
演習問題にまとめられています.サンプルコードもダウンロードできるようで
すから,まずは,すぐにも試してみることができると思います.
本書により,コンピュータビジョンの幾何学的当てはめの研究を始める方が増え,
さらなる研究が進展することを期待します.