序章や「さらに勉強したい人へ」の節で示される歴史的概観が,他の教科書に
はほとんどない部分であるため大変嬉しく読みました.また,Zisserman先生の
著名な教科書との比較や指摘も,ただ受け入れるだけの読み方をしていた自分
にとって大変勉強になりました.
最初はこれだけの内容を自分に理解できるのだろうか,本書の目的である,実
装にまでたどり着けるのだろうかと心配になりましたが「手順」に示される内
容はいずれも明確で,多少理解が追い付かないところもございましたが,「解
説」に示された意義,特徴を理解でき,実装にたどり着くことができそうです.
RANSACの実装が示されているところも,修士の時になかなか良い文献,説明に
恵まれず四苦八苦した記憶があったため,同じような境遇の学生の助けになる
かと思います.サンプソン距離に関しても同様に理解が進みました.初期値の
設定,焦点距離の設定等は他の文献に見られないノウハウとして,とても勉強
になりました.
コンピュータビジョンの問題を楕円推定から入ることに,最初はなじみがなかっ
たのですが,種々の問題を抽象化していることを知り,いくつかの章を読み進
める内に納得がいくものとなりました.
全体的な感想として,コンピュータビジョン初学者にとっては多少ハードルの
高い内容であるように思いますが,コンピュータビジョンに関して多少の理解
のある修士の学生やこれからステップアップを目指す者にとって,バイブルと
なり得る内容であると思います.
実装例が付いていることによって,世に存在するツールでどこまで処理ができ,
どこからを自分で実装するべき追加部なのかが明確になることも本書の特徴で
あると感じました.この点は,他の書籍にはほとんど見られない最大の特徴で
あると思います.