書評:菅谷 保之(豊橋技術科学大学 情報・知能工学系)

まえがきにも書かれているように, 本書は大学生の線形代数の教科書として使わ
れるような内容とは異なるものです. 高校のカリキュラムが変わり, 大学1年生
は行列の演算を知りません. そのため, 学部の講義ではよくある教科書で行列の
演算, 固有値, 固有ベクトルの計算, 行列の対角化などを一通り教えることで精
一杯な状況です. したがって, 大学院生あたりが本書を学ぶのに適しているかな
と感じます.

本書は線形代数の基礎となる理論や演算を理解した上で, データの幾何学的な解
釈, 射影, 誤差の計算などの理解を深めるための最適な1冊です. 特に私の究室
ではコンピュータビジョンの分野でシーンの幾何学的な解析を主に扱っているた
め, 研究内容や解析手法の理解を深めるために非常に有益な内容となっていま
す.

また, 専門用語や説明が英語表記されているため, 線形代数を学習しながら同時
に英語の勉強にもなり, 学生にとって一石二鳥のおすすめの1冊であること間違
いなしです.